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コラム
富田 たかし先生
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「アクアライフコミュニティーが地域社会に元気と希望を与える」をテーマに、
便利さや効率を目指すことで失ってしまった私たち日本人へ、人間力向上を促す「文泳両道」で心の栄養や癒しを補給する各種オリジナル・ビタミンをシリーズでお届けいたします。
ご案内役は、テレビやラジオでおなじみの心理学者・富田たかし先生です。

今回は、オリンピック水泳選手の登竜門、全国ジュニアオリンピックカップ大会実行委員長、(財)日本水泳連盟理事であり、千葉県柏市で柏洋スイマーズを運営している鈴木浩二さんをゲストにお招きして、7回のシリーズ連載でお届けいたします。

ビタミンH(心構え)の補給で、人間力向上の効果が出る
鈴木 浩二氏
富田 たかし先生

第五節
保護者の覚悟ひとつで、子供の可能性が拓ける

富田氏
男はおだてると木に登るという話がありましたが、具体的な事例があったらお話をお聞きしたいですね。
鈴木氏
ええ、正月の強化練習のとき、たまたまコーチの都合で、僕が面倒を見ることになったグループの中に、ジュニアオリンピックを目指している選手がいました。でも当時、まだ、ジュニアオリンピックの標準タイムを切ってはいなかったんです。そこで、最後の練習を終えてから彼を呼んで、「君は、ジュニアオリンピックに出られるかどうかというレベルじゃない、優勝できるかどうかってレベルだ」と話したんです。
でも、本人は標準タイムさえ切っていないから、何を言われているのかピンとこない。標準タイムを切れたのは、ぎりぎりの2月だったんですが、それでも、3月のジュニアオリンピックで優勝しました。
富田氏
サクセスストーリーですね。それは、凄(すご)いな〜。
鈴木氏
その後、スクールの保護者会が開かれたとき、挨拶で「どうか皆さん、お子さんに素敵な勘違いをさせてあげてください」と、その話を例に出しました。
勘違いで良いんです。自分は凄いんじゃないか、家の子は凄いんじゃないかって勘違いすることが大切なんです。保護者会の後、その選手のお母様がいらっしゃって、たしかに良い勘違いさせていただきました、と感謝されました。
その後、彼はジュニアオリンピックで3回優勝しましたからね。男は「おだてりゃ木に登る」の格好の例ですね。
富田氏
先日、レストランで食事をしていた時に、たまたま近くのテーブルに母親と小学校4年生ぐらいの二人連れがいましてね、本当に偶然なんですが、その男の子が水泳をやっているらしくて、食事の最中に一生懸命に話すんですよ。お母さんも聞き役に廻っているんですが、本当に楽しそうでした。
あの子は、スクールの練習からなにから、すべてが楽しいんでしょうね。その反面、今後はお母さんにかかっているなって思いました。高学年になって勉強とか塾とか周りから雑音が入ってきたときに、どうするか。そこでお母さんが迷うでしょう。その選手のお母さんのように、サポートできるかどうか。持続的に頑張っていくことの意味を、親が了解しているかどうかで、子供の未来が大きく変わると思うんですね。
鈴木氏
そうですね。家族のサポートは欠かせないと思います。
富田氏
自分から進んで努力して、苦労して、そして獲得した喜びじゃないと楽しくない。さんざん苦労して手に入ったときほど喜びは大きいでしょ。スポーツでも、音楽でも、学問でも、練習して、学習して、そして獲得する。
「言われたとおりにやりなさい」「減点されないようにしなさい」あるいは、「災難に遭わないように無難に・・」。そんな生き方をして、なにが楽しいのかって思いますねー。
手に入れたいものに対して、全力を尽くすから楽しい。それを、死にものぐるいでどこまで耐えられるかって、我慢大会を目的にしたのでは、少しも楽しくない。
鈴木氏
今日はだめでも、明日は、もっといい、明後日はさらにいい。だからまだまだ楽しみ方が足りない、という表現をしてきましたね。ベストを尽くすのが楽しい。耐えるんじゃないんです。耐えてもなんの成果も得られない。耐えることの先に目的がある。
結果を出した人間がさらに、上を狙える。上に辿(たど)り着いた人間にだけ、さらに上がある。
富田氏
結果=信頼関係という側面もありますよね。結果が出ないと、誰も信用しない。結果の積み重ねで、はじめて信頼が蓄積される。でもライバルもみんな頑張ってるわけですから、そこで結果を残すのは容易なことじゃないでしょう。コーチは、やはりたいへんな仕事ですね。

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