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コラム
富田 たかし先生
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「アクアライフコミュニティーが地域社会に元気と希望を与える」をテーマに、
便利さや効率を目指すことで失ってしまった私たち日本人へ、人間力向上を促す「文泳両道」で心の栄養や癒しを補給する各種オリジナル・ビタミンをシリーズでお届けいたします。
ご案内役は、テレビやラジオでおなじみの心理学者・富田たかし先生です。

今回は、オリンピック水泳選手の登竜門、全国ジュニアオリンピックカップ大会実行委員長、(財)日本水泳連盟理事であり、千葉県柏市で柏洋スイマーズを運営している鈴木浩二さんをゲストにお招きして、7回のシリーズ連載でお届けいたします。

ビタミンH(心構え)の補給で、人間力向上の効果が出る
鈴木 浩二氏
富田 たかし先生

第二節
親、教育者、がそれぞれの立場をわきまえることから、
本当の子育てが始まる。

鈴木氏
僕らが若いコーチだったころ、親は私たちの側に立ってくれました。子供がやめたいと言い出しても、親はそれを止める役割でした。それが今は、親と子供が同じリアクションをします。親も子も同じ精神構造で、同次元で心が揺れているように思えます。
富田氏
それは、親としての役割不足ですね。
子供が落ち込んでいるときに、その気持ちに寄り添うことは悪いと思わない。ただ、一緒に堕落してしまうのは誤りですね。寄り添いながら、子供たちの可能性を探り出すようなアプローチが大事です。
最近の親が「子供に任せています」っていい方をするのを聞きますが、それは子供に同調しているだけですね。
親と先生、そして子供は同列でもないし、友達でもない。本来、立場が違うんです。それが友達の振りをするのは、見ていて気持ちが悪い。
姉妹のようなお母さんとか、兄弟のようなお父さんを演じている限りは、親は教育的機能を果たしていないと思います。
鈴木氏
親が子供に同調して、ときには率先してコーチやスクールの悪口をいっているようなケースも見かけます。知り合いの学校で、インターネットを立ち上げて自由に投稿できるようにしたら、ある日、教員の悪口が投稿されて、それが瞬く間に集中して、結局サイトを閉めなければならなくなったという例を聞いたことがあります。
僕らの頃は、親が教師批判するなど考えられなかった。子供にとって多少、理不尽なことでも、親は子供に向かって「お前が悪い!」と一喝してましたよね。
富田氏
昔は、教師と一体となって子供を育てるという意識があって、それが最終的に子供のためになるという確信があったように思います。当時だって、中には行き過ぎと思われる教師はいたと思いますが。でも、基本的に子供と親、子供と教師という立場、役割の違いは理解されていました。
今は、同じ消費者として、受益者として親と子が寄り添っています。これは子供にとって決して良いことではありません。
ルソーが高貴な野蛮人と評して、文明の悪影響さえなければ子供は立派に育つみたいな主張しましたが、干渉せずにほったらかしで育つという楽観主義は、すでに完全に否定されています。オオカミに育てられた子は、オオカミ以上にはなれません。そう考えると、今の教育が何を目指しているのか、わからなくなるときがあります。
鈴木氏
約20年前、スイミングクラブが創生期の頃は、始めるのも辞めるのも、親の意志でした。子供の自発性よりは、親が将来的に泳げた方がいいといった理由で通わせたものです。
ところが今は、親が始めさせても、辞めるときは子供の意志で辞めていきます。子供の意志で始めて子供の意志で辞めるのなら、まだ納得するんですが、親が始めさせたものを、子供の意志で辞める。
20年前は、スイミングスクールと言っても認知されてなかった。そこで説明会を開いて、親を説得するんですよ。だから、子供が辞めたいと言い出すのは、最初から折込済みなんですね。子供の意志じゃないわけですから。でも、なんとか1級の合格まで、修了証までは騙(だま)してでも続けさせる。入会させたのが親なら、それに責任を持つのも親でした。
富田氏
親に明確なイメージがあったってことですね。だから、もう少し頑張りなさい、といえる。
あるスイミングスクールで取ったアンケートを見たことがあるのですが、親の期待感の落差が大きいことにびっくりしました。最初は「オリンピック選手」になれるかもという、最大値の期待を持っていても、少しスクールに通うと、その実力が見えてしまう。で、その希望がないと確認すると辞めさせる・・。
教育の一環として選択したのなら、それじゃいけないですね。情報化の時代と言われて、お母さん方、お父さん方の周辺には、さまざまな専門情報が揃っているし、時間的な余裕も、昔よりあるはずなのに、自分の子供に対する指針が示せないでいるように思います。
鈴木氏
ひとつのものを突き詰めるという意識が薄いですね。水泳がだめなら、サッカーでも野球でも、ゴルフでも・・・。今は、できるだけ短時間で結論を求めようとするんでしょう。
富田氏
なんでも安直で、インスタントな扱いに思えてしまう・・・。スクールへ通う親御さんの年齢は、30代前半でしょうか。すると生まれ落ちたときに高度成長で、自販機などが町に溢(あふ)れていて、すでに豊かな日本になっていた。この辺にも、なんでも促成栽培といった意識と関係があるのかもしれません。

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