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コラム
富田 たかし先生
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「アクアライフコミュニティーが地域社会に元気と希望を与える」をテーマに、
便利さや効率を目指すことで失ってしまった私たち日本人へ、人間力向上を促す「文泳両道」で心の栄養や癒しを補給する各種オリジナル・ビタミンをシリーズでお届けいたします。
ご案内役は、テレビやラジオでおなじみの心理学者・富田たかし先生です。

今回のゲストは、新潟でスイミングを3スクール運営している株式会社ダッシュ専務取締役 桑原 進氏です。
ビタミンR(良い関係)で地域社会に元気と希望を。
水を通して、「生きがい」や「人間力向上」を還元する

のテーマでお届けいたします。

ビタミンR(良い関係)で地域社会に元気と希望を。
桑原 進氏
富田 たかし先生

ビタミンT(感謝)が人間関係の絆をつくる
頭が良いって「思いやり」や「理性」が高いことなのだ

富田氏
最近、ありがたいとか、生かされて生きるとかの感覚を持てない人が増えてますね。大きなシステムの中で、自分一人で勝手に生きているのではないという、当たり前のことが、ふだん気づきにくいんです。先ほども話に出たように、匿名で顔を持たない人が、沢山いる。例えば、外食産業などのように、すべて同じマニュアルで決められた接客をされる。これでは、自動販売機で物を買うのとなんら変らない。こうした匿名のシステムの囲まれていると、誰かのお世話になっていると言う当たり前のことを忘れてしまう。外食産業だって、実際は、沢山の人が係っているんだけど、そのおかげで食べたり飲んだりしていることに、思いが至らない。自分一人の力で生きていると思い込む。その最たる物が、家族なんかいらないという若者が増えていることです。お母さんも、お父さんもうるさいだけ。お金とコンビニさえあれば生きて行ける・・。
桑原氏
でも、それは思い込みですよね。
富田氏
そうです。幻想ですね。今様のシステムに支えられた幻想です。これは、もっと広い視野を持てれば、幻想と気づくはずで、実は、それが教養なんですね。それを身につけてもらうためにいろいろな教育があるわけです。そこには、想像力も必要で、現象として目の前にある物事だけでなく、隠れた真相が見えることをイマジネーションと呼ぶんですね。
桑原氏
具体的に身につける方法は、なかなか難しいんでしょうね。
富田氏
うん。いろんな方法が考えられると思います。異文化を体験して、今の自分を相対的に眺める体験をする。あるいは、具体的な事柄・・・例えば、水泳でも、頭で思っても身体がそのとおり動かないことなんていつも起こることですよね。そのときに、誰かに教えてもらってなんとか出来た時に、誰かの後押しがあって、初めてものにできたと実感できるわけです。
桑原氏
「おかげさま」ですよね。
富田氏
そう「おかげさま」という言葉です。ましてや、災害に遭遇して指導者の人が、おかげさまって意識があれば、支えているみんなの顔が見えてくるわけですよ。こうした信念のある人たちが、こうした意識を持っていれば、とても大きな影響力があります。さらに、個人間の関係がしっかりしていれば、なおさらですね。
桑原氏
そうですよね。とっても共感します。
富田氏
エコロジーの話でも、わかりやすく説明すれば、子供たちだって理解するはずなんです。自分たちが飢えないで生活できているのも、地球上に生き物たちがいてくれるからですね。当たり前のことなんですが……。一方で、先進のシステムみたいなことばかり話題にされています。
桑原氏
とても大きな課題です。でも関心を持つことから始まるんですね。
富田氏
そうですね。もっと身近なことで言えば、スポーツのように自分を高めて行く場で、みんなのおかげで自分の可能性を引き出してもらえる。
桑原氏
思いやりの心を、幼い時から育てることが重要なんですね、いや必要なんですね。
富田氏
そうです。親が勘違いしがちなのは、たくましい子供って言う時に、野生と言った表現をするんですけど、自然界の野生とは意味が違います。人間って、かなり特殊な動物ですよね。群れで生活する社会的動物です。協力関係を築いて、狩りをしたり農耕をしたり、子育てをしてきた歴史があります。つまり社会的能力を持っている方が、野生味があるってことなんです。社会性に乏しいってことは、野性味が問われてることを指すんですね。
もう少しわかりやすく言えば、都市の便利な生活にどっぷり浸かって、システムに同調するだけの人の中から、社会性のない人たちが生まれています。一人籠ってしまうタイプ、傍若無人に振る舞うタイプ、社会的規範を壊すタイプ・・・。どれも社会的関係を司っている機能に障害があるんです。これが、思いやりの心の欠落なんですね。人間は群れで生活する動物ですから、他者の思いを尊重したり、他者の気持ちを推し量る、思いやる生き物です。
では、なんでそうした能力があるかと言うと、社会で行動する、地域で生活する、他人と共に生きているから。そもそも人間がどうやって生活して来たかという歴史を遡れば、本来、思いやりは贅沢品でもなんでもなかったはずなんです。私たちが人間として生きて来た、基本的な能力だったはずなんですね。その基本がダメになるような環境が、私たちの前にあるってことが、そもそもの問題なわけです。
桑原氏
自分さえ良ければ……みたいな考え方ですね。
富田氏
ええ。孤立しても生きて行けるという幻想は、特殊な社会状況があって、許されるものです。部品交換のように人を入れ替えても成り立つ、マニュアル通り話せば接客ができるなど、人間的な係わりを持たなくても、生活が成り立ってしまう。すると、中には社会性なんて持たなくても生活できると勘違いする人が生まれてしまうんですね。
桑原氏
それはいやな時代ですね。とっても危険です。
富田氏
はい、とても危ないことです。だから、お世辞や口だけでなく、本当に心から「おかげさまで」といえる環境が大事だし、貴重なんです。
桑原氏
これからも「おかげさまで」を、忘れずに小さな会社でもできることもあると信じてクラブの運営にあたりたいと思います。本日は、本当にありがとうございました。
富田氏
こちらこそ、貴重なお話をありがとうございました。

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