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コラム
富田 たかし先生
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「アクアライフコミュニティーが地域社会に元気と希望を与える」をテーマに、
便利さや効率を目指すことで失ってしまった私たち日本人へ、人間力向上を促す「文泳両道」で心の栄養や癒しを補給する各種オリジナル・ビタミンをシリーズでお届けいたします。
ご案内役は、テレビやラジオでおなじみの心理学者・富田たかし先生です。

今回のゲストは、新潟でスイミングを3スクール運営している株式会社ダッシュ専務取締役 桑原 進氏です。
ビタミンR(良い関係)で地域社会に元気と希望を。
水を通して、「生きがい」や「人間力向上」を還元する

のテーマでお届けいたします。

ビタミンR(良い関係)で地域社会に元気と希望を。
桑原 進氏
富田 たかし先生

私たちの使命は効率さや便利さだけを追求することではない
手間隙かけて一人ひとりを認めることから始まる事業なのです

桑原氏
被災してから営業再開までの休業中は恥ずかしながら、スタッフに給料を払っていける状態じゃなかったんですね。だから、社員全員に辞めてもらうしか方法がないと考えていました。ところが、社員はもちろん、アルバイトまで、誰一人として辞めるって言わないんですよ。それどころか、建築会社にかけあって、40℃近い炎天下の中、全員でプールの泥だしのアルバイトを買って出たんです。
富田氏
ほぉ〜、建築会社に雇ってもらった……。
桑原氏
勇気をもらいました。女子従業員までがヘルメットをかぶって泥出ししたり、鉄骨を運んだりしてましたからね。今じゃ、彼女たちはやさしい笑顔で、プールを磨いています。これって自分が、そうした体験をしたからできるんでしょうね。
富田氏
そう、そこに全員がコミットメントした、関わったから。
桑原氏
三条校でこうした経験をしているので、他校でも、こうした類似体験ができれば、意識が変って、パワーになるのかなと単純に思うんですが、なかなかうまく行かない……。
富田氏
スタッフが日常行っている会員さんへの指導やパフォーマンスの意味を勉強するチャンスは作っていらっしゃいますか?
桑原氏
他のクラブに比べれば、かなりこだわってやっている方だと思っています。
富田氏
災害のように、目の前に立ちはだかった共通の大きな困難に、一致団結するっていうのはあるんですが、こうした偶発的な水害のようなファクターなしに、日常的なレベルでいかに大きなパワーを引き出すかってことが課題なんですね。きっと、単に泳ぐことが好きというスタッフの集団じゃないんでしょうね。それから、もう一段、ステップアップしたところが目標なのでしょう。そこに辿り着けると、かなり自信を持って、指導したり、サポートしたりできるんでしょうね。でも、他のもっと楽しくて格好いいことに目が向くと、とくに若い人たちは難しいですね。現在、自分が行っていることが、どれほど社会貢献になって、どれほど人のために役立っているかを実感できないと、ステップアップは難しいでしょう。
災害の場では、そうした実感を得やすいんですが、日常ではなかなか困難です。
桑原氏
私も長年この業界にいて、自然災害に限らず、一度閉鎖後の会員復帰率を見てるんですが、だいたい4割程度は辞めていきます。悪い場合は、半数近くが辞めてしまうんですね。それが、三条校の場合、辞めた割合が1割以下だったんです。これで、自分たちがやってきたことに自信が持てました。きっと、スクールに通うことが生活の一部になっているんだろうと……。
富田氏
ええ、そういうことですね。
桑原氏
4泳法を覚えるだけの水泳塾ではない、別の要素があった。
富田氏
はい。それはヒューマン・ファクターでしょうね。匿名のコーチではなくて、ちゃんと名前を認識されている。つまり、会員の方は、そのコーチとつながりを築いているんです。そのコーチは、また仲間のコーチや上司とつながっている。そして、そのシステムの中で、一人一人が自分の役割を担っていて、けっして取り替えが容易にできるようなやわな存在じゃないんですね。
濃密な人間関係と言いますが、個人でなければ築けない関係がベースにあるんです。現代の会社組織、例えばチェーン店などその代表例だと思うのですが、欠けたパーツに誰をはめ込んでも、過不足なく機能する。それが近代的なビューロクラシー(官僚機構)ですよね。つまり、役割だけが決まっていて、その役割がこなせれば、Aさんでも、Bさんでも、Cさんでも誰でもいいわけです。で、そうしたシステムこそ、近代的で先進的だと、多くの経営者がずっと信じ続けてきました。確かに、均一なサービスを提供することを考えれば、けっして間違いとは言えません。互換性が高いことは、企業に取って大切ではある。でも、互換性がきかない特別な仕事というものもある。例えば、あるコンピューター会社をイメージして下さい。そこで、設計に携わっていて、次世代の言語を開発しているなんて人は、外から見れば一人のデザイナーですが、でも、取り替えが出来る人じゃないんです。だから、取り替えがきかないってシステムは、実は一番贅沢な組織なんですね。だから、そうした企業は、綺麗ごとではなくて「私たちの財産は、人です」と胸を張るわけです。こうした組織、チームは、今や最高の贅沢ですよね。だから、そうしたチームとつながっている会員さんは、単なる個人とコーチを超えた関係を築いてるわけです。
これが、とても重要なことです。
桑原氏
そうなんですね。しかも、不思議なことに、知らない会員さん同士にまで連帯感が生まれるんです。会員さん同士のつながりも濃いんですね。
富田氏
そうなってきますね。ですから、個人的な関係にまで育てたって所が、実はとっても凄いことなんです。
桑原氏
そこで、今の連帯感を信頼感まで高めることを目指しているんですが……。
富田氏
そのレベルまで行くと、会員さんの中で、トップクラスの実力を備えている人が出現すると、自然発生的に周りが応援する体制ができあがるでしょう。
桑原氏
あー、そうなんです、その通りなんです。一人強い人が出てくると、今までは全くマスターズに興味を示さなかった人までが、その人につられて試合に出ちゃうんです。マスターズって県レベルだと、だいたい女性が多いんですが、私たちのクラブでは、男性が6割も占めています。トップクラスの選手はいないんですが、3位、4位でも得点がもらえるので、参加人数の多さで勝ってしまいました(笑)
で、そこでまたチームとしての連帯感が育ってくるんです。
富田氏
なるほど・・・。信頼感の持てる場所があって、たまたま一人が選手で出場するとなると、みんなで応援する、さらに自分も出場するって雰囲気ができるんですね。
桑原氏
ええ。あるコーチが、どうせ応援するなら、みんな試合に出ちゃいましょうよって、声をかけたら、みんなその気になってくれましてね。あれはファン心理っていうか「じゃ出てやるよ」ってことになって、本当にうれしかったですね。

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