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コラム
富田 たかし先生
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「アクアライフコミュニティーが地域社会に元気と希望を与える」をテーマに、
便利さや効率を目指すことで失ってしまった私たち日本人へ、人間力向上を促す「文泳両道」で心の栄養や癒しを補給する各種オリジナル・ビタミンをシリーズでお届けいたします。
ご案内役は、テレビやラジオでおなじみの心理学者・富田たかし先生です。

今回のゲストは、新潟でスイミングを3スクール運営している株式会社ダッシュ専務取締役 桑原 進氏です。
ビタミンR(良い関係)で地域社会に元気と希望を。
水を通して、「生きがい」や「人間力向上」を還元する

のテーマでお届けいたします。

ビタミンR(良い関係)で地域社会に元気と希望を。
桑原 進氏
富田 たかし先生

地域の皆様に支えられて、コミュニティーとして機能する
ダッシュが誕生した

富田氏
人と人、個人と個人をつなぐ関係を作るには、共通の価値とか共通の思いとかがあると、個人的な関係も生まれるんだと思いますね。
桑原氏
私が会社で言っているのは、太いパイプでなくてもいい、細くてもいいから長いパイプを作ろう。10歳の子が習いに来ていて、退会後、10年後、20年後に自分の子供を抱っこしてきてくれる……そんなつながりを沢山作ろうと話すんです。
富田氏
それはけっして細くないですよ。
桑原氏
ええ、一回、退会で途切れた糸も、また次の代で復活するような、そんなしつこさを持とうぜ!って話しています。
そんなことで、よく泥臭いっていわれますが・・・
富田氏
それは泥臭くないどころか、新しいと思いますよ。スポーツとしての水泳、競技としての水泳を磨いていくのが従来の流れだし、それはそれで大切なことだと思います。でも、そこで、沢山の人を切り捨ててきているんです。流れに合わない人は、いりません……と。でも、本来はそうじゃないですね。スポーツや競技じゃなくて、泳ぐことは楽しい、気持ちいいと思えることを認めること。それがプラスアルファの要素です。
きっと、ダッシュさんは、無意識にでも水泳に対して、奥の深い、広い捉え方をしているんだと思います。だから、一度辞めた人にも、またご縁があったらお会いしましょうと言う対応ができるんだと思います。メダルを取ることにだけ価値があると断定してしまったら、対象外の人たちは余計な人になってしまうけど、水泳を学んでいる人に、余計な人なんていないんです。
桑原氏
きっと、私自身、大手クラブのやり方と比べて見て、不安でしょうがないんです。
富田氏
世の中全体が、効率化とか、完璧経営とか……ある種、システマティックに、スマートにってことばかりを追いかけて来た。でも、この手法はすでに行き詰まってます。すると素朴な所へ戻っていくわけです。だから基本的な人と人の信頼関係とか、濃密なつながりとかに回帰しつつあります。その中で、ダッシュさんがやってることは、泥臭いのではなく新しいことと思いますね。
桑原氏
そういっていただくと、自信がわいてきます(笑)
ダッシュは、どんな子でもまず認めてあげようと話しています。人は存在を認めることからきっかけが始まると思うのです。それはいいことも悪いこともすべて含めてです。個々にいろんな子がいますから・・。我慢力がある子もいれば、ない子もいます。目標が高い子もいれば、低い子もいます。でも、みんな認めた上で、前進するきっかけが見つかればいいなぁと。これを、連帯感にして、信頼感に変えて、最後は愛にまでいければ素晴らしいな、って思うんです。
富田氏
愛が目標っていいですね。
桑原氏
会員数で日本一って言われるのでなく……
富田氏
人と人のつながり方を見て欲しいですよね。
桑原氏
はい。子供が家へ帰ってから、夕食の時、おばあちゃんに、今日、プールであったことを話してくれたら、俺たちの勝ちだって……こういう世界なんで、すぐ勝った負けたって言いますが(笑)最高だ〜なって思っています。
富田氏
いえいえ。けっして間違った方向じゃないと思いますよ。ただ、具体策となるとさまざまな試行錯誤が必要になってくるでしょうね。
桑原氏
新人のスタッフは、連帯感までは行くけれど、そこから信頼感まで辿り着くのが難しいって言います、当然だとは思いますが……。
富田氏
信頼感を育てるには、時間的な積み重ね、それと、情緒的なつながりです。なんとなくの連帯感は、同じ所属とか同じ目標であるとかで、出来てきます。ところが信頼感というのは、信じて頼むと書くように、同じ人間として、「信頼」できなくちゃならいない。たとえば、完璧に見える人が、ちょっとした瞬間に、弱みを見せる、悩みを見せる。そんな時に、あっ、こんな完璧な人も自分と同じように悩むんだ・・と気づく。つまり、ある情緒を共有した時に、しばしば信頼感の一歩を踏み出すことがあります。コミュニケーションの中に、理屈の話ではなく、楽しい、悲しい、悔しいといった感情のやり取りが出来ることが大切です。相手がどうして悲しんでいるか、悩んでいるか・・そういうことが深くわかるほど、相手と触れ合ったと実感できるんです。そう実感しあった同士が、一緒の職場で働けば、チームの中で信頼関係が出来る。
桑原氏
第一線で、会員さんを指導するのは、だいたい25歳以下の若いスタッフなんです。中には、学生のアルバイトもいます。彼らは、コミュニケーションを取るのがうまいし、連帯感を作るのもうまい。でも、残念ながらそれぞれの子供を認知することと、信頼感を築くことは苦手なようなんですね。
富田氏
それは、欠けているものがあるからですねー。相手に興味を持つことに欠けています。コミュニケーションがうまいように見えても、どれほど相手から情報を引き出しているかは、疑問です。問題は、相手の話に耳を傾けて、相手が発信しているものを、どれほど受け止めているかですね。先ほど、情緒について話をしましたが、人の感情の揺れは微妙なものです。表面的な観察をしただけでは、子供がどれほど悩んでいるか、困っているかは、わかりません。じゃ、どうやって、子供たちの感情を察知するかといえば、もっともっと受け身になって、相手の話を聞く、相手が発信していることをキャッチする・・・。それが出来て初めてコミュニケーションが図れたと言うわけです。そのためには、担当している子供に、もっと興味を待たなければダメですね。たとえば、子供一人ひとりについて、レポートを書かせてもいいかもしれません。そこで、その子の面白い所や変っている所に気づいたら、気づいた人間の勝ちなんです。それだけ相手を受け止められたわけですから。
桑原氏
能動的にうまくても、受動的には下手ってことですね。
富田氏
これはトレーニングが大切です。これをやらないといけない。いまの人は、要領がいいんです。ちょっとした会話のキャッチボールは上手なんです。でも、一人ひとり、個別の心の微妙な変化に対応するとなると、ほとんど出来ていません。
桑原氏
いまのスイミングスクールの実態は、ほど遠いですね。コーチが子供の名前を知らない、泳力もわからずに指導しているクラブも多い。それが実態なんです。でも、ダッシュでは、完全担当性を敷いています。ところが親御さんの中には、利便性優先でという声も少なからずあります。確かに何もこだわらず問題と思わず効率性だけ求めれば。関わりが薄いほど、クラブとしては都合がいいんです。だから、手間暇かけずに、安直な指導に走るクラブが、とても多いんです。
富田氏
そうでしょうね。手間ばかりで、その割に成果が見えてこないんですから。
桑原氏
そう、そうなんです。どっちにしろ3年もすれば、退会して行くんだから、まぁいいか!なんです。だから、効率を求めて、一人のコーチが250名も300名も受け持っているんです。でも、ダッシュでは180名以下を守っています。経営効率を考えたら、これじゃ儲からない……でも、このくらいに抑えないと会員の個人管理は無理なんです。
富田氏
それは、とても贅沢なことと、多くの人が気づき始めていると思いますが、まだ、具体的に、その価値をわかっているわけじゃないんですね。いま、学校の教室がそんな状態です。ワン・オブ・ゼムだから、教室から一人抜け出しても、メモ書きで報告して終わりなんです。
桑原氏
え〜、そうなんですか。今まで見えなかったことが少し見えてきました。
富田氏
ですから、若いコーチが、どれほど受け持ちの子をわかっているか・・・それをコーチ間で競わせてもいいと思いますよ。
桑原氏
まず、働いているコーチ自身が、どれほど贅沢な指導をしているかって理解することも重要なんでしょうね。
富田氏
そうですね。会員が贅沢な環境にいるってことと同時に、実は、コーチ自身もとても恵まれた環境にいると知るべきでしょう。有名選手を見事に育て上げると、そのコーチの能力が認められて有名になりますね。では、どうやってうまく育てたのかといえば、その選手に深くかかわったからですよね。300名も受け持たされて、通り一遍の指導をしていたんでは、自分に自信も誇りも持てないでしょう。たとえ、試合で記録を残せなくて、数年で退会していく子でも、心の深い所まで触れた経験を持てれば、それは若いコーチにとって、大きな財産になります。
桑原氏
ですよね。それで、数十年後に、○○コーチいますかって訪ねてくれたら、もう何物にも代えられないですね。
それも、当時のニックネームで呼ばれたりすると、たまりません。でも、今や、そんなコーチと子供の関係が贅沢品なんですね。
富田氏
とんでもなく贅沢なことですよ。
桑原氏
ほんとに自信がでてきちゃったなぁ(笑)
富田氏
まぁ、本来、当たり前のことなんですが、ダッシュさんは、ちゃんと教育を実践しているんですよ。小さいお子さんを育てている。お年寄りの可能性も引き出している。教育の究極の贅沢はマン・ツー・マンじゃないですか。アリストテレスがアレキサンダー大王を教えた。ここに究極の姿があるわけです。でも、究極は無理ですよ。これじゃ、みんなご飯食べられなくなっちゃう(笑)でも、そこに、少しでも近づこうとする姿勢が大切なんです。

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