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コラム
富田 たかし先生
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「アクアライフコミュニティーが地域社会に元気と希望を与える」をテーマに、
便利さや効率を目指すことで失ってしまった私たち日本人へ、人間力向上を促す「文泳両道」で心の栄養や癒しを補給する各種オリジナル・ビタミンをシリーズでお届けいたします。
ご案内役は、テレビやラジオでおなじみの心理学者・富田たかし先生です。

今回のゲストは、セントラルスポーツ株式会社常務取締役で、鈴木大地(元オリンピック金メダリスト)など多くのトップアスリートを育成指導しているゼネラルコーチの鈴木陽二氏です。
ビタミンS(素直な心)は、トップ・アスリートの大きな武器である。
のテーマでお届けいたします。

ビタミンS(素直な心)は、トップ・アスリートの大きな武器である。
鈴木 陽二氏
富田 たかし先生

ビタミンS(信頼)こそ、チャレンジ精神の栄養素である。
人と人との関係の原点に変えることが、将来を明るくする。

鈴木氏
僕らが、まだ20代の頃に校内暴力が問題視された時期がありました。
富田氏
ええ、そんな時期がありましたね。
鈴木氏
あの頃、学校の先生が、よくクラブに訪ねて来られました。それで、学校で言うことをきかない子供が、整然と練習しているのを見て、驚いて帰って行くんです。
富田氏
わかるなー。学校の先生はびっくりするんでしょうね。
鈴木氏
あれって、裸の付き合いだから、そうなったと思うんです。まぁ、暴れた所で、コーチに羽交い締めにされて終わりってこともありますが・・・(笑)
富田氏
やっぱりスポーツでつながっている人間関係は強いですね。それに、ちゃんと目指すところもあるわけですから。
鈴木氏
つながりといえば、オリンピックや競技会のような緊迫した舞台では、コーチと選手がともに戦うから戦えるので、選手が孤立していたら間違いなく、周りに潰されてしまいます。
富田氏
ええ。いまはそこを勘違いする傾向があります。周りの人にサポートされているのに、そこに気づかない。まるで、一人でなにもかも成し遂げたように誤解してしまう。スポーツや芸事に打ち込んでいる人は、まだ、周りの人への意識があるんですが、ごく普通の子供たちがそこに気づかないように思います。
鈴木氏
いじめにしても、そうしたところがありますね。個人では解決できないから、これほど大きな騒ぎになっているんです。たいへんだろうけど、やっぱりそこへ先生たちが入り込んでいかないと改善には結びつかないと思います。それを個人レベルでなんとかしろといっても無理な話ですよ。
富田氏
しかもシステムで解決しようとする、あれはおかしなことだと思っています。
鈴木氏
それに、すべて学校側の責任とするような風潮がありますが、家庭の側も問題がありますよね。両親が、もっと子供を見ていなくちゃいけないでしょう。
まぁ、マスコミ報道の仕方もどうかと思うんですけど・・。
富田氏
そうなんです。犯人探しをしたところで、いっこうに問題解決には至りません。先生がどう介入して行くのか、先生と生徒の関係はどうあるべきなのか・・そうした具体的な話には向かわないんですね。
鈴木氏
まず、人と人の関係の原点に返るべきだと、僕なんかは単純にそう思うんですけどね。
富田氏
ええ、妙にこむずかしい話に持って行きたがるんですが(笑) 具体性が見えないってところがまずいんでしょうね。情報化って騒がれて、抽象的なことばかりが優先されています。その点、スポーツというのは、とても具体的な世界ですね。
鈴木氏
日本の社会は、どうも責任が曖昧でも済むようにできてるみたいです。そういうのを、子供たちが見ているから、まずいことになってるように思いますね。米百俵じゃないけど、原点を大切にしないと、将来が不安です。
富田氏
私は団塊の世代なんで、生徒数がもの凄かったんですが、それでも、先生は一人ひとり見ていてくれましたよね。
鈴木氏
ええ、ちゃんとあだ名まで付けてくれて(笑)
富田氏
あの時代と比べると学校内での人の関係が、とても薄くなっています。しかも、寛容さが失われている。さらに、少子化で一人っ子が多くて兄弟もいないのも、問題に拍車をかけている一因と思われます。
信じることで、選手の可能性は無限大に!
選手はコーチが信じれば強くなる!
富田氏
最初に、人を見る目という話題がでましたけれど、これは選手のコーチングに深く係ってくると思うのですが・・.
鈴木氏
選手はコーチが信じれば強くなるものです。
富田氏
あー、そうでしょうね。まず、信じることから始まりますよね。
鈴木氏
ええ、そうです。選手をその気にさせれば、いくものです。いま、中西悠子さんというバタフライの有望選手がいますが、彼女は太田コーチが「もっと伸びるはずだ」と選手に言い聞かせることで、記録を伸ばしています。アテネオリンピックで銅メダルを獲って、そこで終わりにしていない。コーチが信じているから、記録を伸ばしてるわけです。
富田氏
親子でも、親が子供を信じることで、子供の才能が開花するってありますけど、それと同じですね。
鈴木氏
確かに持って生まれたセンスはありますが、それでも時間を経て開花するタイプも少なくありません。
富田氏;遅咲きってタイプですね。
鈴木氏
ええ。選手の才能は、ある程度わかるつもりですが、それでも見逃していることは、あります。
富田氏
鈴木コーチがいらっしゃるセントラルスポーツでは、どのように才能の芽を見つけていらっしゃるんですか?
鈴木氏
育成のプロジェクトを組んでいます。最初は有望と思われる選手を100名程度選考し、、そこから、徐々に基準を上げることを繰り返して数年かけて、オリンピックを目指す選手を絞り込んで行きます。
富田氏
いきなり有望選手を見つけるなんて不可能でしょうから、時間が必要な作業ですね。
鈴木氏
オリンピック選手を育てるのは、私たちの企業理念のひとつですから、金を狙える選手を育てるのが、私たちの使命でもあるんです。
富田氏
やっぱりかなりの長期計画になるんでしょうね。
鈴木氏
やはり最低でも5年計画を目処に選手育成をすることになります。本当に地道にコツコツと積み上げていくしか他に方法はないんですよ。
富田氏
なるほど、たいへんな作業の積み重ねがあってオリンピック選手が生まれているわけですね。でも、そこからこぼれてしまった選手への対応も大切なことですよね。
鈴木氏
もちろんです。僕らは競技水泳ということでやってきていますが、本来、選手に一番伝えたいことは、挑戦するチャレンジ・スピリットを養って欲しいってことなんです。本当の所を言えば、記録が伸びても伸びなくてもいいんです。高いレベルに挑戦した体験が、その後、世の中に出て苦しい状況に追い込まれた時に、少しでも役立ってくれればいいんです。
富田氏
うん、そうですね。オリンピックのメダルとは別の形で、その人なりの宝物が手に入る。
鈴木氏;僕はスポーツをやる意味を、そこに置かなければいけないと思っています。そうじゃなければ、記録が伸びないというだけの理由で、多くの子供たちが脱落してしまうでしょう。
富田氏
そうだと思います。
鈴木氏
そうしたベースの上に、オリンピックへの出場とか、メダルの獲得とか、世界記録の更新などがあるんですが、そこまで辿り着けるのは、本当にごく一握りの人しかいませんからね。
富田氏
ええ。僕は、いつの時代でも子供たちには、一握りのヒーロー、ヒロインの存在がとても大切だと思うんですが、そうしたヒーローを育てる過程で、やはり鈴木コーチが指摘されたように、人と人のつながりが不可欠だと思いますね。そこで、初めて信頼が生まれ、信頼があるからこそ子供たちがチャレンジができるんだと思います。

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