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コラム
富田 たかし先生
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「アクアライフコミュニティーが地域社会に元気と希望を与える」をテーマに、
便利さや効率を目指すことで失ってしまった私たち日本人へ、人間力向上を促す「文泳両道」で心の栄養や癒しを補給する各種オリジナル・ビタミンをシリーズでお届けいたします。
ご案内役は、テレビやラジオでおなじみの心理学者・富田たかし先生です。

今回のゲストは、セントラルスポーツ株式会社常務取締役で、鈴木大地(元オリンピック金メダリスト)など多くのトップアスリートを育成指導しているゼネラルコーチの鈴木陽二氏です。
ビタミンS(素直な心)は、トップ・アスリートの大きな武器である。
のテーマでお届けいたします。

ビタミンS(素直な心)は、トップ・アスリートの大きな武器である。
鈴木 陽二氏
富田 たかし先生

選手とコーチではなく、
まず人と人の関係を築くことが、信頼関係の第一歩である。
一人の人間として選手をみとめること。
そして困難を乗り越えることは人間力向上には必須条件、過保護はダメ!

富田氏
レース前の選手を見ていて、だいたい結果がわかるものですか?
鈴木氏
そうですね。だいたいわかりますよ。
富田氏
それはどれくらい前にわかるんですか?
鈴木氏
もちろん、トレーニングの内容、当日のコンディションにもよりますが、1ヶ月前には、だいたいわかります。
富田氏
経験的に、基準値のようなものがあるんでしょうね。
鈴木氏;基準値まで達していない選手を、どのように1ヶ月間で仕上げるかがコーチの仕事のひとつです。
富田氏
あっ、それができるんですか。でも、それはご苦労でしょうね。
鈴木氏
91年、オーストラリアのパースで世界選手権大会が行われた時なんですが、1月開催でして、日本が冬で現地は夏なんですね。で、12月からオーストラリアへ入って猛練習をしていました。ところが、日本の役員が来始めた頃から、選手がバタバタ倒れたことがありました。
富田氏
えー、たいへんじゃないですか。
鈴木氏
ええ。もう本番まで2週間しかなかったんですが、これは回復を待つしかないと腹をくくって、本当は、最後の追込みの時期なんですが、思い切って軽い練習に切り替えたんです。
富田氏
非常事態ですね。
鈴木氏
案の定、大会の1日目、2日目はダメでした。ところが、一人が結果を出したら、チーム全体が乗って来たんですね。水泳は個人競技といわれますが、面白いものでチームとして戦う姿勢ができると結果はずいぶんと違うんです。
富田氏
だから、応援も必要になるんですね。
鈴木氏
ええ、仲間の応援に、それが現れたりするんですけど、日本の応援って、海外でかなり人気があるんですよ。
富田氏;えっ、そうなんですか。
鈴木氏
面白がってソープやフェルプスなんて有名選手まで応援に加わってくれましたからね。
富田氏
それは凄いな。
鈴木氏
上半身にJAPANと文字を書いたり、(笑)、若い人の感性でいろいろ工夫していて面白いと思いますね。
富田氏
チームとしての雰囲気作りがうまいんですね。それが良い方向に作用すれば、確かに素晴らしいですね。
鈴木氏
ええ。今は社会人が増えてきましたから、ジェネレーションの伝承といった部分も期待できます。
富田氏
ナショナルチームの社会人の割合はどの程度なんですか?
鈴木氏
約半数は、社会人ですね。高校生は、ほんの数名です。
富田氏
それは時代が変わりましたね。高校生に指導するのと、大学生や社会人をコーチするのでは随分違うでしょうね。
鈴木氏
自立した大人として対応するってことでしょうか・・・。僕はあまりにも自由奔放にやらせるので、周りからは危なっかしいと思われてる(笑)
でも小さい子供のころは、先に自信を付けさせることが大事だと思います。。自信を付けさせてから、注意してあげれば良い。
富田氏
でも、あまり枠にはめようとすると、個性や特長も伸びないんじゃないですか?
鈴木氏
そうなんです。枠にはめて小さく育てたくないんです。それに、戦うのは選手本人ですから、精神的には、のびのびとした所がなくちゃいけない。
僕は人を教育する上で、一番難しいのは、転ばぬ先の杖でいくのか、それとも転んだ後のフォローでいくのかってことだと思うんですよ。
富田氏
そこは世のお母さんたちが、最も悩んでいるところだと思います。
鈴木氏
最近のお母さんたちは、みんな、転ばぬ先の杖方式で、過保護になってますよね。
富田氏
そうなんですね。
鈴木氏
そういう意味では、日常では体験できないことが、水泳の世界には、あると思うんですけどね。お母さんたちは経験的に知っていても、子供たちには体験しないとわからないことがあると思います。
富田氏
ええ、体験しないとわからないこと。失敗しないと見えてこないこと。今は、お母さんたちに見守る忍耐力が不足しているんですね。
鈴木氏
僕は、よけいなものは見ないようにしてるんです。よけいなものを見るから、「ほんとに、あいつは!」ってなるでしょ(笑)
富田氏
イライラ、カリカリしますよね(笑)
鈴木氏
だから、見ない!ただ、社会人としての考え方だけは、伝えます。それに、選手はみんな素直ですから、話せばきちんと理解してくれます。知らずにやっていることも多いですから、話すことは大切ですね。
富田氏
そうですね。まぁ、間違ったことをやれば、本人が心の中では「しまった」と思っているんでしょうし・・。
鈴木氏
ええ。それに強くなればなるほど、世間は注目しますからね。普通の人なら見逃されるような些細なことでも、有名選手がやれば、やはり名指しされる現実があります。
富田氏
そういう環境であれば、なおさら自分を守るためにも常識は備えておいてもらわないと困りますよね。ただ、一般的に、注意する、忠告するって難しいんです。ちょっと言い過ぎると、相手は萎縮してしまう。でも、伝えるべきことは伝えなくちゃいけない。その辺の兼ね合いは、とても微妙ですね。
選手の指導でも、やはり課題のひとつなんじゃないでしょうか。
鈴木氏
僕は田舎の生まれなんですけど、田舎は地域社会で育てられているところがあります。隣近所のおばちゃんたちに、褒められたり叱られたりして育っています。だから、選手とも、まず人間として付き合いたいって思いが強いんですよ。
富田氏
そこって基本ですね。
鈴木氏
よくサウナに一緒に入って世間話をするんですよ。
富田氏
いいですね。若い人の話に入っていけるのは・・・.
鈴木氏
世間話をしてますよ。次の競馬のレースは何が行くかとか(笑う)
富田氏
いや、羨ましい関係ですね。確かに、監督と選手という役割より先に、人と人の関係ってあるはずですよね。
鈴木氏
ええ。選手とか子供とかじゃなくて、一人の人間として、ちゃんと見ていたいんです。
富田氏
本来、それが人と人の関係の理想型なんでしょうね。
鈴木氏
だんだんそうした関係が少なくなってきていますよね。だからこそ、スイミングの世界では、そこを大切に残して行きたいって気持ちは強いです。

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