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コラム
富田 たかし先生
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「アクアライフコミュニティーが地域社会に元気と希望を与える」をテーマに、
便利さや効率を目指すことで失ってしまった私たち日本人へ、人間力向上を促す「文泳両道」で心の栄養や癒しを補給する各種オリジナル・ビタミンをシリーズでお届けいたします。
ご案内役は、テレビやラジオでおなじみの心理学者・富田たかし先生です。

今回は、世田谷スイミングの選手を取上げ、
人間力向上を促す「文泳両道」ビタミンS(自信)が内発性を生み出す
というタイトルでお届けいたします。

人間力向上を促す「文泳両道」ビタミンS(自信)が内発性を生み出す
村尾 清和氏

第一節
水泳教室の役割

今や、世の中は超少子化時代。1971年には、出生率が2.16人だったのが、2003年には1.29人にまで落ち込み(国立社会保障・人口問題研究所)、さらに歯止めが効かないところまで来てしまっている。
考えてみれば、たくさんの子供に囲まれて悪戦苦闘する夫婦の姿が「大家族」の珍生活として、テレビでシリーズ化されるのだから、兄貴のお古の短パンをはかされて走り回るのが珍しくなかった団塊の世代にとっては、まさに「隔世の感」といったところだろう。
そして、夫婦に一人の子供となれば、否応なく盛り上がってしまうのが、子供の英才教育だ。マスコミで「グローバル化」が呪文のように凝り返されると、親自身が“グローバルな人間”になれなかったのは、外国語が堪能でなかったせいだと結論づけて英会話教室に通わせ、感受性豊かな芸術家になれなかったのは、幼少時代の情操教育に問題があったと思えば、音楽系の教室に通わせ、さらに、健康と将来の花形スポーツ選手としての才能を見極めるために、スポーツクラブに入会する。
ある関係者によれば、「幼稚園の子供でも、3つの習い事を掛け持ちしているのが、当たり前」なのだという。少子化時代の子供たちは、ある意味、団塊の世代の子供たちよりハードな日常を過ごしているのかもしれない。
玩具メーカー「バンダイ」が行った小学生以下の習い事アンケートの結果を見ると、こうした傾向が顕著なのがわかる。
調べによると、男児のベスト3が、「水泳」「英会話」、3位が同率で「ピアノ」と「体操」。一方の女児もトップは「水泳」そして「ピアノ」、3位が「習字」の順だ。「字が下手で、人前で恥をかいた経験があるので」「字が上手なだけで、賢そうに見えるから」という「習字教室」に通わせる動機に、親の思惑が見え隠れしている。
さて、このアンケート結果の中で、特筆に値するのが、「水泳」の圧倒的ともいえる支持率の高さである。男児の親の約30%、女児でも約25%の支持を受けダントツであるばかりか、「将来的にやらせたい習い事」でも、男児・女児共に他を引き離してトップを走っている。
なぜ、数多い習い事の中で、「水泳」がこれほどまでに支持されているのか・・・・。
今回は、この大人気の「水泳教室」の裏側と、新しい取り組みに挑戦している水泳スクールに、スポットを当ててみる。

水泳教室の昼下がり、サロンと呼ばれるプールを見下ろす中2階に、若いお母さんたちが、いくつかのグループに分かれて、我が子の勇姿や迷走に熱視線を送っている。そのいくつかのグループに「なぜ、水泳教室を選んだのか」と問いかけてみると、ほとんどのお母さんは、戸惑ったように「・・・みんなが通っているので」といったなんとも曖昧な答えが返ってくる。
中には「習わなければ、泳げないので」や「ひょっとして才能が隠れているかもしれないから」といった、やや前向きな意見もあったが、これは、ほんの少数派にすぎない。
そう、「水泳」の高い支持率を支えているのは、なんとも漠然とした「人並み」意識の結果といえそうだ。
一方、「水泳」という特殊技能を教える多くのクラブやスクールも、こうした父兄の意識をすっかり計算し尽くしているかのように「ところてん」方式が、幅をきかせている。ビジネス的には、多くの会員を効率よく指導できればいいわけで、その為にノウハウを凝縮した指導要綱(マニュアル)とカリキュラムが用意されている。分刻みで精密に動く工場のベルトコンベアーよろしく、規格品を次々と製造していくが、多くはクロール、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライという4泳法をマスターすることなくドロップアウトして行く。いってみれば欠陥だらけの規格品を大量生産しているにすぎないようにも見えてしまう。漠然とした「人並み」意識で入会しているのだから、辞めるときに躊躇がないのも当然かもしれないが。クラブ側もそんな事情は先刻お見通しと言った感じで、欠員が出れば、「体験会」とか「短期教室」といったイベントを開いて、また、隙間ができたベルトコンベアーに新入生を乗せていく。どっかで見たことがあると思ったら、「回転すし屋」に似ていたりして・・・。

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